RPGツクールMV概要


要約

アドベントカレンダー1日目という事で、ツクールMVの全体像を紹介します。「ツクールMVを採用するかどうか」「開発に必要な技術情報は何か」「ツクールMV開発の問題点は」を書いています。

01はじめに

RPGツクールMV、ついに体験版が公開されましたね。予約特典も発表され、発売まであと約2週間。楽しみですねー!!😆。

ツクールMV発売にあわせて、RPGツクールMV Advent Calendar 2015が始まりました。アドベントカレンダーとは、12月1日~12月25日まで、順番にブログを書いていくリレー企画です。私(トモタカ)は1日目と25日目を担当します。よろしくお願いします。

Qiitaとは別に、完全初心者向けの初心者の為の、ツクールMV Advent Calendar 2015も作りました。まだ1日目の原稿すら書いていませんが、海外時差で12月1日って事でご容赦をば💦。コツコツ毎日書いていこうと思います。
ちなみに伊予柑さんが企画したRPGツクールMV(なんでもあり) Advent Calendar 2015もありますので、ギークな方も、ゆるめな方も、好きな場所で楽しめればいいなぁと思います。

1日目はこの記事「RPGツクールMV 概要」と題しまして、RPGツクールMVの全体像と技術について、浅く広く取り扱います。また、それぞれの技術情報に関して、参考リンクや書籍も記しました。

  • ツクールMVを採用するかどうか
  • 開発に必要な勉強方法は何か
  • ツクールMV開発のハマりポイントと問題点

を知りたい方向けです。序盤は初心者向け、後半はエンジニア・コアユーザー向けの内容です。また、購入時のポイント、参考リンクもまとめています。

02RPGツクールとは?

RPGツクールMVのイメージイラスト

RPGツクールとは、パソコンで簡単にゲームを作るソフトウェアです。コンストラクションツールと呼ばれるジャンルに属します。ツクールシリーズは20年以上の歴史をもつ息の長いソフトで、開発・販売母体はアスキーエンターブレインKADOKAWAと変わりつつも継続的にリリースされています。販売されたプラットフォームもスーパーファミコンPlayStationニンテンドーDSWindows PC用ソフトなど多岐にわたります。
主な特徴として

  • パソコン初心者でも簡単にゲームが作れる(Word/ExcelをたしなむレベルでOK)
  • マップエディタにスイッチ(イベント)を配置する事で、プログラミングせずにゲームが作れる
  • 2Dゲームの制作が主流
  • パッケージ販売なので家電量販店で買える

というポイントがあります。
最新版であるRPGツクールMVは、英語版は2015年10月25日、日本語版は2015年12月17日に発売されます。

03RPGツクールMVの特徴と新機能

前作のRPGツクールVX Aceに比べ、大きな変化があります。

マルチプラットフォーム対応

HTML形式をベースに、さまざまなプラットフォームに対応しました。

Microsoft WindowsMac OSXGoogle AndroidApple iOS(iPhoneiPadの事)、そしてウェブブラウザ用にHTMLゲームも出力可能です。それに伴い、数多くの変更があります。

  • スマートフォンではタッチ操作、PCではマウス移動が可能になりました。
    • PC版では従来通りキーボード操作も可能です。
  • 複数プラットフォームに対応させる為、oggファイル、m4aファイルを両方用意する必要があります。
    • PCとスマホで読み込むファイルが違うので、見落とし注意です。

画像サイズの拡大

RPGツクールVX Aceに比べ、画像素材サイズは1.5倍になりました。一例として、顔グラフィック素材の倍率比を記します。

MV基準
2000, 2003 3.0倍
XP 1.2倍
VX, VX Ace 1.5倍

過去のツクールからの変換は、素材規格を合わせて読み、修正する必要があります。

JavaScriptプラグイン

RPGツクールXP, VX, VX Aceで採用されてきた、RGSS(Rubyベース)が、JavaScriptに変更となりました。しかし基本的なAPI命令は前作のツクールVX Aceと変わりません。よってRGSSの知識はMVプラグイン開発でも役立ちます。

RTPの廃止

過去のRPGツクールは、RTP(ランタイムパッケージ)と呼ばれるソフトウェアのインストールが必要でした。それが廃止となります。
RTPのメリットは、素材データをあらかじめPCにインストールする事で、ゲームファイルの配布容量を小さくできる事でした。デメリットとしてRTPをインストールしないとゲームが起動しないので面倒でした。
ツクールMVでRTPがなくなった事は、プレイヤーの手間がなくなった代わりに、ゲームファイルの容量肥大化に繋がります。

フロントビューバトル/サイドビューバトルを両方搭載

チェックボックスひとつで切り替え可能です。

Mac OSX対応

過去のツクールはWindowsのみに対応でしたが、Mac OSX版も販売されます。ただしMac版はSteamからのダウンロードになるので購入時に間違えないように注意してください。

04他のゲーム制作ツールとの比較

ゲーム制作環境として、類似のソフトウェアには、Unity、Unreal Engine、Adobe Flashなどが存在します。それぞれの特徴と違いを簡単にまとめます。

ソフトウェア名 価格 2Dゲーム制作 3Dゲーム制作 プログラミング言語
Unity 5 無料 (高機能版は有料) ⭐️⭐️ ⭐️⭐️⭐️ C#,
UnityScript(JavaScript)
Flash CC(Animate CC) 月額2180円から ⭐️⭐️⭐️ ⭐️⭐️ ActionScript
Unreal Engine 4 無料 (売り上げの5%を支払う) ⭐️ ⭐️⭐️⭐️ C++
RPGツクールMV 13842円 ⭐️⭐️⭐️ ⭐️ JavaScript

情報は2015年12月1日時点のものです。上記表はわかりやすさを優先した簡易表記としています。正確な情報は各社公式ウェブサイトからお問い合わせ下さい。

ツクールMVの立ち位置を1行で示すと。
13842円ポッキリで、2Dゲームを、初心者でも手軽に作れる。色々やるならJavaScriptで拡張可能。
という事になります。他の3種のソフトウェアは、ツクールに比べ圧倒的に多機能ですが、その分あつかう為のスキルも必要になります。

ほかにもジャンルに合わせたゲーム制作支援ツールは多数あります。ツクールに似た多機能RPGエディタWOLF RPGエディター。ノベルゲーム制作では、NScripter2ティラノビルダーScript少女のべるちゃん。アクションゲームに向くインディーゲームクリエイター。シューティングゲーム制作を可能にするシューティングゲームビルダー、ブラウザ上でゲーム制作できるPLiCy Game Createなどがあります。

ゲーム制作ツール情報リンク

05ツクールMVを支える技術

RPGツクールMVは、複数のライブラリやソフトウェアの集合体です。従来のツクールではツクール本体だけで成り立っていた機能が、複数の外部アプリケーションに頼る構造になりました。様々なツールと連携可能になるので、制作の手間が増えたとも言えるし、カスタマイズの自由度が増えたとも言えます。ツクールMVで使用されている技術と、それらの参考情報や書籍を掲載します。

Qt

RPGツクールMVのエディター部分はQtで開発されています。

ツクールMVのエディター部分はQtキュートで開発されています。QtはC++で書かれたフレームワークです。主にマルチプラットフォーム化の為に利用されます。SkypeAutodesk Mayaなどに使用されています。Qtの技術により、WindowsとMacの両OSでRPGツクールMVを動作させる事ができます。 ツクールMVでゲーム制作する上では、Qtを学ぶ必要性はありません。

Node.js

JavaScript環境としてNode.jsを搭載しています。

JavaScript環境としてNode.jsを搭載しています。

Node.jsノード ジェーエスはサーバサイドを想定したJavaScript実行環境です。というのがオフィシャルな書き方ですが、Node.jsは一口に語るのが実に難しいプロダクトです。あらゆる場面、あらゆる場所で使われており、2015年現在、最もホットなJavaScriptエンジンと言えます。代表的な採用事例を列挙すると、多彩な使われ方がしている事が分かります。

ジャンル プロダクト名 利用シーン
ウェブブラウザ Google Chrome JavaScriptを高速に動作させる為に使用
画像制作 Adobe Photoshop 画像書き出し機能を司る
電子工作 Intel Edition 複数の開発言語のひとつとしてサポート
CMS WordPress.com ブログの管理や投稿サービスに使用
ウェブサーバ 事例多数 大量アクセスに強いサーバが構築可能

初心者の為に乱暴を承知で例えると、Node.jsとは万能レンジみたいなものです。JavaScriptで下ごしらえした食材を入れると、おいしく処理してくれます。このレンジの凄い所は、どんな場所でも動き、超コンパクトで、他製品に比べ高い性能を持ちます。まさに最強、魔法のレンジ。利用者はJavaScriptを扱い、あとはNode.jsに突っ込めば良い。そんな万能調理器具みたいなものです。よって上に記したように、あらゆる場所でNode.jsというパワフルなレンジが組み込まれ、製品の一機能として動いているのです。

Node.js自体を学ぶ事は、JavaScriptを学ぶ事と同義です。習熟にはJavaScriptの参考書を読むと良いでしょう。
ところでNode.jsの進化は早く、燃えるような勢いで、変化と成長がありました。たとえばバージョン4は2015年9月9日にリリース。バージョン5は2015年11月2日にリリースです。これは大きな課題を解決した為に起きた事象ですが、あまりに活発すぎる事が伝わります。JavaScript界隈は流れが早いので、Node.jsのGitHub Releasesを片目に追いつつ、書籍で情報俯瞰するのが良いでしょう。クジラ飛行机さんJS+Node.jsによるWebクローラー/ネットエージェント開発テクニックは特にオススメです。Node.jsとJavaScriptを幅広い視点から語っており、実践的でモダンな開発手法を平易にまとめた、素晴らしい書籍です。

Pixi.js

描画ライブラリのpixi.jsは高速な描画をサポートします。

Pixi.jsピクシー・ジェーエスは描画に特化したJavaScriptフレームワークです。ツクールMVの描画を司ります。
2D描画速度が高速で、APIが充実しています。pixi.jsを叩けば多彩なグラフィカルな表現が可能になります。ツクールMVの標準機能に不足を感じたり、ツクール臭さを消したいならお世話になるでしょう。ツクールMVに搭載されているのは、バージョン2.2.9ですが、最新版のバージョン3で、大幅に進化しています。

pixi.jsの日本語書籍は存在せず、情報は少ないです。英語書籍はLearn Pixi.jsがありますが、内容は作者のGithub情報とほぼ同じです。まずはkittykatattack/learningPixi · GitHubpixi.js Examplesを斜め読みして、できる事を掴むのが良いと思います。

NW.js

WindowsとMac向けにはNW.jsを通してゲームが生成されます。

NW.jsエヌ ダブリュー・ジェーエスは、クロスプラットフォームに対応させる為の実行環境です。ツクールMVからWindowsアプリとMac OSXアプリを書き出す為に使われます。HTML5とNode.jsを用いて、WindowsとMac OSXで動作するデスクトップアプリケーションを作る事ができます。NW.jsよりも最近はGithub社のElectronの方が有名です。

個人的には、ツクールMVを購入して一番の疑問は「なぜElectronではなく、NW.jsを採用したのか?」という点でした。有名で、アップデートが多く、活発なElectronを採用した方が良いように思いました。もしかしたら、開発当初はElectron(旧Atom-Shell)はそこまで有名ではなかったのかもしれません。また、NW.jsはXinputに対応しているため、ゲームコントローラ対応が簡単なので、それが理由かもしれません。

NW.jsに関する書籍は皆無ですが、SPA(シングルページアプリケーション)の考えが最も参考になります。またElectronの情報も理解の助けになるでしょう。

Apache Cordova

AndroidとiOSに出力する為に、Apache Cordovaを使います。

AndroidとiOSに出力する為に、Apache Cordovaを使います。

ApacheアパッチCordovaコルドバは、スマートフォン対応の為に使います。ツクールMVから書き出されたゲームファイルをAndroid/iOSに変換させる役割です。ツクールMV公式マニュアルでは、iOS変換の為に紹介されています。

Cordovaで出力されたツクールMVゲームは、いわゆるガワネイティブです。Cordovaの中で、ウェブブラウザが動いている仕組みです。
すなわちCordovaとは、万能の額縁。ツクールMVでは実現できない機能も、Cordovaを通せば可能になります。Cordovaから制御する事で、広告や位置情報(GPS)など、スマートフォンで使われるあらゆる機能を実現できます。

CordovaはかつてPhoneGap呼ばれていました。Adobe社の買収後、オープンソース化されました。多くのスマホアプリ開発の現場で使われており、競合製品にXamarinCocos2d-xなどが挙げられます。

Cordovaは書籍よりもウェブの情報が充実しています。いくつか出版されている和書の中では、クラウドでできるHTML5ハイブリッドアプリ開発 Cordova/Onsen UIで作るiOS/Android両対応アプリが良いと思いました。Cordova開発環境を提供するMonaca社のガイドブックでもあります。

Crosswalk

AndroidとiOSに出力する為に、Crosswalkを使います。

AndroidとiOSに出力する為に、Crosswalkを使います。

Crosswalkクロスウォークはスマートフォン対応の為に使います。ツクールMVから書き出されたゲームファイルをAndroid/iOSに変換させる役割です。ツクールMV公式マニュアルではAndroid変換の為に紹介されています。

The Enigma Protector

ゲームの安易に解析されない為に、The Enigma Protectorを使用します。

EnigmaエニグマProtectorプロテクターは、暗号化・パッケージ化に使うソフトウェアです。標準機能としてツクールMVに暗号化機能は実装されていません。難読化や暗号化や電子透かしを搭載する事は可能ではありますが、それらは外部ツールや自作で対応する必要があります。RPGツクールMV公式が推奨している方法が、Enigma Protectorで、Virtual Box化して暗号化・パッケージ化します。

06ハマりポイントと諸問題

初心者でも簡単にゲームが作れる、歴史あるソフトウェア。それがRPGツクールです。ツクールMVでJavaScriptをプラグイン機構を採用した事から、プログラマからも熱い注目を集めています。またマルチプラットフォームの開発環境という意味でも、多くの開発者から期待されています。 しかし、発売直後のソフトウェアゆえ、解決されていないトラブルもあります。よく挙げられるハマりポイントと、今後問題になりそうな部分を記します。

今回はツクールMV特有の課題についてのみ取りあげますが、以下の問題に加え、一般的なマルチプラットフォーム開発やゲーム開発のハマり所も、もちろん存在します。デバッグが大変とか、アプリストア申請問題が大変とか、表現規制が大変とか。

暗号化問題

RPGツクールMVでは、暗号化機能は実装されていません。書き出されたゲームデータのフォルダを開けば、簡単に使用素材が見えてしまいます。例えば、Google PicasaApple iTunesを使うと、ファイル自動検索機能によって、画像や音楽が意図せず丸見えになってしまいます。画像転載や悪用はやっかいですし、商業ゲームなら権利問題をシビアに考えねばなりません。それらを防ぐには暗号化が必要です。しかしツクールMVではJavaScriptプラグインを読み込む構造上、安易にゲームファイルの暗号化が出来ません。弊害を考慮しつつ、いくつかの暗号化手法が提案されています。

とはいえ、ひとくちに暗号化と言っても、何を採用するか考えるには、まずは価値判断が必要です。

  • 普通のファイラーやプレビューソフトで見えない形式にするだけで良いのか
  • 実際は暗号化されていないが、簡単には開けない程度の手間が要求されれば良いのか
  • 本当の意味でセキュアに暗号化する必要があるのか
  • 悪用された場合に法的に訴える為の根拠として暗号化したいのか

おそらく制作者によってスタンスが異なります。実利と感情の両面から検討を進め、各自の方針にあわせた技術を選ぶべきでしょう。 暗号化や不正対策は、いたちごっこの世界です。あえて乱暴な言い方をすれば、どこかで諦める必要があるのです。闇雲に暗号化・難読化を実装して開発効率を下げたり、動作スペックを跳ね上げるのは、あまり賢い方法とは言えません。バランスを見て検討する必要があります。

さいわいRPGツクールMVは素直なファイル構造で出力されるので、外部ソフトウェアで改変しやすい形になっています。標準機能で暗号化が搭載されなかった事は残念ではありますが、ポリシーを定めて適切な暗号化手法を選ぶと良いでしょう。

容量問題

ツクールMVには、ゲーム制作環境と同時に、各種素材もついてきます。マップチップ素材や音楽素材を組み合わせる事で、初心者でもすぐさまゲーム制作が始められるメリットがあります。しかし、このファイルがかなりの高品質・高画質で、容量が重たい。何も考えずに書き出しボタンを押すと、300MB程のゲームができあがります。実際に使われている素材はごく一部でも、フォルダ内の素材ファイルを全てパッケージ化してしまうのです。

無駄ファイルにより、読み込みの遅さや容量肥大化に繋がります。HTMLゲームの場合、ストリーミング形式で素材を読み込みます。データ容量が多いと、読み込みに失敗して、ゲームが強制終了する可能性があります。ですので、一般配布の際は

  • 画像素材と音楽素材の圧縮
  • 不要なファイルの削除
  • (可能ならば)プラットフォームに合わせた素材変換

を行う必要があり、有志の手により削除・圧縮自動化ツールも開発され始めています。ゲームフォルダ内のJSONファイルから、使用する素材データを検索する仕組みです。しかしJavaScriptプラグインで動的に画像を作成している場合、本来使うべき画像ファイルまで削除してしまう可能性もある為、注意が必要です。

ところで私はゲームコンテストレンタルサーバを運営しており、他のゲーム作者様からファイルをお預かりする立場でもあります。そこに300MB程のファイルがぼんぼん送られてきたら、たまったもんじゃありません。クラウド破産待ったなしです。ひぇえ……どうしよう……😰。

スマートフォン対応が大変問題

スマホ対応は、外部ソフトウェアをインストールする必要があり、初心者にとって難易度の高い作業です。公式マニュアルではiOS化はCordova、Android化はCrosswalkの利用が推奨されています。

RPG Maker MV(海外版)発売当初、その点を誤解していたユーザが数多くおり、Steamのレビュー欄では「スマホ向けの書き出しが不便だ、誇大広告的だ」という指摘が散見されました。現在は情報も出回った為、レビュー評価は上向き傾向です。しかし、一口に「スマホ対応」といえど、ハードルが高い事には要注意です。

連携するソフトウェアのライセンス問題

ここまで記したように、ツクールMVには多種多様なソフトの連携で成り立っています。それぞれのソフトには利用規約があるのですが、一部のソフトでライセンス違反の恐れが指摘されています。ツクール公式側でオフィシャルに対処すべき問題と、ユーザ側が対処を検討すべき問題の、両方があります。どちらにしても、今後のアップデートに注視すべきでしょう。
全体として、ツクールMVの利用規約やライセンスは、2015年12月1日現在は完全なものと考えず、注意深く観察するのが賢明だと思います(まぁ、まだ日本語版発売前ですし……)。

プラグイン衝突問題

プラグイン開発にあたり、コーディング規約やガイドラインが整備されていません。名前空間が分けられておらず、プラグインが衝突しまくります。既に500以上のプラグインが公開されており、統制は皆無。パッケージマネージャーもありません。ゲーム作者は地道にプラグインを搭載、デバッグ、修正を繰り返す必要があります。初心者ツクラーにとっては、大きな壁になるでしょう。

実はプラグイン衝突問題は、過去のRPGツクールから存在した問題です。しかしツクールMVからはマルチプラットフォーム対応です。PC・スマホ・タブレットは、画面サイズが多様です。様々な環境に適したUI/UXを実現するには、プラグインの力に頼らざるを得ない。それゆえに、実装するプラグイン数も増える傾向にあり、衝突問題も無視できなくなりました。

いわゆるメモリリーク問題

大変やっかいな問題です。長時間プレイしたり、重たい描画を行うと、ゲームが強制終了します。ツクールMVではpixi.jsでテクスチャを生成し、GPUに送信しますが、GPUから削除されません。メモリリークを防ぐ為にはテクスチャを解放する必要がありますが、pixi.js側に関数があるものの、それがツクールMVからは使用されていません。

正確にはこの現象はメモリリークではなく、Memory bloatという方が近いです。

HTML版でセーブデータが消える問題

HTML版のセーブデータはlocalStorageに保存されます。すなわち、ユーザが意図せず削除してしまう可能性があります。またlocalStorageの保存期間やポリシーはブラウザにより異なるので、突然セーブデータが消える問題は結構重大です。さらにTwitterクライアント上やChrome上からツクールMVゲームHTML版を別々に動作させた場合も、ユーザはセーブデータが消えたように感じる事でしょう。ブラウザ挙動の違いにも苦しめられます。対処方法としては

  • サーバ上にセーブデータを保存する
  • セーブ書き出し機能を無理矢理搭載する
  • そもそもHTML版を用意しない、セーブさせない

程度しかなく、最善策が存在しません。この課題を根本的に解決するには、RPGツクールMV本体の利用規約に抵触する可能性があります。重大で厄介で、そして繊細な問題です。
今後しばらくはHTML版ゲームは、セーブ機能に依存しない短編モノに限られると思われます。

バージョンが乱立している問題

RPGツクールMVは、海外ではRPG MAKER MVという名前で販売されています。実はバージョンアップが混沌としており、公式から配布されているものだけで、2015年12月1日現在以下のバージョンがあります。

  • RPG MAKER MV(Degica)
  • RPG MAKER MV(Steam)
  • RPG MAKER MV Trial
  • RPGツクールMV 体験版
  • RPGツクールMV 製品版(12月17日発売)

ソフトウェアアップデートのタイミングがそれぞれ違うので、注意が必要です。たとえば、RPG Maker MV(Degica)は、先行販売版と一般販売版がありますが、私の購入した先行販売版ではアップデートが来ません。バージョン1.0から変わらない状況で、Steam版より3バージョン遅れています。

公式配布バージョンが乱立しているだけで悩ましい状況ですが、ユーザーの手により破壊的改変を行うパッチ等も公開され始めており、カオス一歩前な状況です。 特に海外でのRPG MAKER MV販売パブリッシャーであるDegica社がSteamで「毎週水曜日にパッチを公開するよ」と発表し、独自の進化とコミュニティを築いています。これは開発元のKADOKAWAとは別系統の流れであり、公式のパッチリリースではなく、Dropboxに修正パッチ直置きで配布されています。海外販売担当社が開発元と連携せず(?)修正パッチを公開している事象であり、良くも悪くも、ちょっと衝撃的です。今後の展開に注視する必要がありそうです。


これらの諸問題。KADOKAWA公式のアップデートで、バグ修正がなされるのか。あるいは有志がルールを作って秩序を目指すのか。あるいは強力なプラグインの力業でなんとかするのか。あるいはrpg_core.js等を強制上書きという超力業でなんとかするのか(この方法は技術的にもライセンス的にも、相当な注意が必要です)。そして日本のツクラーコミュニティ/海外コミュニティはどう動いてゆくのか……。2015年12月01日現在、あらゆる将来が未知数です。これ、ほんと、どうなるんでしょう……。

既に発売済みの海外フォーラムやSteamは、まさに熱狂という言葉が相応しい状態でした。バグ報告と誤解と質問と議論で、喧々諤々状態。新しく出来る事が増えたと同時に、新しい課題や疑問もドカンと出てきたわけですね。発売1ヶ月で500を越えるプラグインがリリースされ、ぽつぽつとゲームも公開され始めました。いまは発売直後の熱が少し収まってきて、「さぁ、簡単にゃ解決できない問題、どうしようか」というフェーズに差し掛かりつつあります。12月17日発売の日本でも、同様の事態が起こると思われます。

07RPGツクールMVは買いか? 使えるのか?

さて、正直なところ、RPGツクールMVはゲーム開発で本当に使えるんでしょうか?
スマホ対応を無視するなら、前作のRPGツクールVX Aceで十分事足ります。Windowsゲームのみリリースするつもりなら、VX Aceで開発を続けるのは大いにアリです。VX AceはMVに比べて動作スペックも低くてすみます。
対してツクールMVはツクールVX Aceで出来る事は全て可能。VX Aceの上位互換と言える内容で、あらゆる機能が強化されました。しかし開発に必要なスペックはVX Aceに比べて高い。スマホ出力は可能と言いつつ実際は高度なスキルが要求される。動作安定性の検証が少ない。情報が少ない(発売前ですし……)という意味では、VX Ace水準の「ストレスを感じない開発」には一歩及びません。

しかし、MVには一周目の楽しさがあります。これは新しい世界を開拓していく楽しみであり、未来を感じます。いままでになかった表現方法やゲームが生まれる余地があり、そこは未踏で、大きなチャンスが眠っているかもしれません。
あらゆる諸問題や、情報不足を認識しつつ、ツクールMVで実現される(かもしれない)未来を買うか。という点が、ツクールMV採用の分かれ目になりそうです。

安定を採るならVX Ace。
未来と祭りに乗るならMVではないでしょうか。

08ツクールMVの不思議な未来感

ツクールは、UnityやUnreal EngineやFlashなどのライバルとは全く違います。古風にもパッケージ販売スタイル。2Dオンリーで、3Dなんて範疇外。ライセンスもツクールの歴史を引き継いだ、ゆるふわ雰囲気。しかし最先端のJavaScriptエンジン採用で、マルチデバイス対応。 まるで江戸時代から未来人がやってきたような、不思議な感覚を覚えます。
しかし長期的に見るなら、ツクールMVは大いに売り上げを伸ばし、一定の地位を築くソフトになるのは、まず間違いないでしょう。このツールのポテンシャルは、凄まじいものを感じます。

さて、技術面を中心にツクールMVの概要を語りましたが、本来のツクールの良さは「初心者でもゲーム制作を楽しめること」にあります。過去のツクールシリーズから大きな変化があったツクールMVですが、初心者へ対するやさしさ・楽しさは健在です。まさにツクールMV自体が、ゲームである事は、昔も今も変わりません。子供もお年寄りも、初心者も熟練者も、あらゆる人がゲーム開発にのめり込むならば、それは実に愉快な未来だと思います。

ツクールMVの未来に期待しつつ、アドベントカレンダー2日目へバトンをつなぎます。
2日目はmizchiさんです。

09ツクールMV購入情報(おまけ1)

RPGツクールMVの体験版と購入方法です。海外版、日本語版の両方があり、海外版では英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、ブラジルポルトガル語、ロシア語を切り替え可能です。

販売会社 価格 言語 特典 備考
Amazon 10092円 日本語 なし 日本語版で、最も安い
エンターブレイン 13842円 日本語 101曲のBGM素材集
ドワンゴストア 13842円 日本語 風来のシレン特典 Mac版ライセンスも販売
海外Steam 7980円 英語 なし 10月25日発売
海外Degica 79.9ドル 英語 なし 10月25日発売。
Windows版に加え、Mac版SteamKeyがついてくる

上記表は2015年12月1日時点のものです。正確な情報は各販売店にお問い合わせ下さい。特に価格面については変動の恐れがあります。

10ツクールMVお役立ちリンク集(おまけ2)

サイト名 運営者名 備考
RPGツクールMV 日本公式 日本公式 安心と信頼の公式情報。
RPGツクールMVでアプリリリースを目指す開発室 kuroさん RPGツクールMVの情報をひたすら追い続けるブログです。
RPGツクールMVまとめwiki 伊予柑さん 非公式(?)Wikiです。
RPGツクールMV なんでもwiki なのさん 技術に強いなのさんの運営するWikiです。
RPG MAKER WEB FORUM 海外Degica社 RPGツクールのコミュニティです。英語。
ツクマテ 弓猫さん RPGツクールのコミュニティです。

連載アドベントカレンダー企画

RPGツクールMV Advent Calendar 2015では、ツクールMVの技術情報のリレーイベントです。

技術以外のツクールMV情報は、伊予柑さん主催のアドベントカレンダーへ

初心者向け記事準備中です。


Cコメント

間違いの指摘、タレコミ、感想、批判などなど。なんでも気軽に投稿してください(∩´∀`)∩
直接のご連絡は、メッセージフォームからどうぞ。

  • 匿名Rさん より:

    こんばんは、記事読ませていただきました。
    とても分かりやすい記事ですね^^

    1点確認させていただきたいのですが、ツクールMV購入情報のドワンゴストアの備考について、「Mac版ライセンスがついてくる」との表記がありますがWindows版購入でMac版ライセンスが付いてくるという意図で書かれていますでしょうか?

    ドワンゴストアのページからは「Mac版ライセンスがついてくる」という文章を見つけられなかったのですが、私の見落としか検討違いでしょうか?

    • トモタカ より:

      ご指摘ありがとうございます。「Mac版ライセンスがついてくる」の表記は誤りです。修正しました。
      「Mac版を販売しているのは、ドワンゴストアのみ」と書いていたつもりが、誤って記してしまっていました。
      ドワンゴストアの場合、Mac版、Windows版は、それぞれ別に購入する必要があります。
       
      海外Degica版の場合、79.99ドルで購入すると、Steamキーがついてきます。こちらはページ一番下に記述されています。
       
      ご指摘、感謝します。ありがとうございました。

  • 匿名Kさん より:

    良い感じの記事ですね。しっかりと読ませていただきました。
    ところで、購入情報にジョーシンの情報がなかったです。まぁ予約特典がないしいつ何時販売受付中止になるかわからないのでない方が良いですが、どうしてなかったのか気になりました。予約受付はすでにしてて自分は予約しました。
    忙しいところすいません。

    • トモタカ より:

      コメントありがとうございます。コメント欄は承認制ですが、ちゃんと届いていました。わざわざ2回も、すいません💦
      ジョーシンの件は、公式からアナウンスされていないので、記載しませんでした。ジョーシン以外の販売店・小売店も今後増えると思われます。ヨドバシカメラや、ビックカメラなど。そのどれもが、おそらくAmazon版パッケージと同じだと思われます。詳細は各ショップを参照する必要がありますが、Amazonより安い(もっとも安い値段を更新した)という事でもなければ、掲載する必要度は低いかな、と思っています。
       
      教えて頂きまして、ありがとうございます。また気がついた点がございましたらコメント頂けると嬉しいです🙇。

  • コメントさん より:

    このコメントは、メールフォームから頂いたご指摘の返信です
    特に海外でのRPG MAKER MV販売パブリッシャーであるDegica社がSteamで「毎週水曜日にパッチを公開するよ」と発表し、独自の進化とコミュニティを築いています。これは開発元のKADOKAWAとは別系統の流れであり、公式のパッチリリースではない
    と書かれていますが、開発は海外デジカ主体なので、無問題ではありませんか?

    • トモタカ より:

      いいえ。海外デジカが開発主体であるという情報が出回っていますが、それは誤りです。スタッフロールにも書かれている通り、開発はKADOKAWAで、その主体は尾島陽児さんです。
      海外デジカの役割は「海外版の販売とサポート」「RPG MAKER WEB海外フォーラムの管理」「準公式プラグインの開発とマネジメント」です。
      つまり、海外デジカは「海外ユーザの声を反映し、パッチを作成する事は、サポートの一環である」という名目は立ちますが、それがKADOKAWA・尾島さん開発と歩調を合わせたものなのかは、2015年12月2日現在不透明です。
       
      海外デジカ、特にArcheiaさんの働きは素晴らしく、技術面でもトラブル面でも、素早く手厚いサポートが行われています。しかしデジカは公式販売元ゆえにアナウンスの影響も大きいです。海外と日本で別系統の進化を辿り、国を跨いだプラグインの互換性が損なわれるような事態になると大変だな、とは想像します。
      現時点では、あくまでも可能性の話ですが。

  • さつまいも より:

    こんばんは。
    とてもわかり易い記事をありがとうございます。

    記事内にDegica社の独自サポートやVer.UPの遅れについてご指摘がありますが、
    本ソフト、海外版と日本版のパブリッシャーがバラバラの思想で動いている感が。
    いろんな意思決定の体勢がどうなっているのか心配なところです。

    日本版パブリッシャー主導で諸々まとめてくれれば、と当初は期待したのですが、
    実際は、例えばサポート体制にしても “Wiki作るところまではやった!あとはユーザーに任せた!” という状態ですので。
    もくもく会やニコ生の開催を重ねて手さぐりしていきたい、というところなのでしょうかね……。

    いずれにせよ状況を注視する必要があるというのには同意します。

    (余談)9項目のツクールMV購入情報ですが、海外版と日本版特典の差異は
    実際はもっとあると思います。(Steam海外版はサンプルマップが無いとか、今買うとパッケージキャラはDLCだとか)最近発表の特典だけを抜粋した、ということなのでしょうか?

    • トモタカ より:

      コメントありがとうございます🙇。ご指摘の通り、特典についてはもっと多くの差異があります。でも今回はわかりやすさを優先して、省略して記述しています。12月1日現在有効な特典を、キーポイントのみ抽出し、簡易表記としました。細かな違いや正確な価格は、お手数とは思いますが各ショップからご確認頂ければと思います。やや正確さに欠ける状況で恐縮ではありますが……💦。

      また、これもご指摘の通り、海外版と日本版の違いは数多くあり、「特典」と銘打っていないけれど、販売パブリッシャーによる差は数えればキリがない程存在します。
      たとえば海外Steam版では準公式プラグインのアップデートが頻繁ですが、日本のは(おそらく)そうではないとか、差が多すぎて一口には語れませんね……😥。
      これについては別の記事で改めて書こうと思います。おそらくブログ記事1本分くらいの分量になってしまいます💦。